ビジュアル的にかっこいいか、手法的にスマートか、いずれにせよ、よっぽどのインパクトがなければ通りすがりの人からやり過ごされてしまう街中のビルボード。しかし、右の写真のビルボード、広告にしてはクライアントのロゴもなければ、キャッチコピーも見あたらない。ぐるりと見渡し、ビルボードの右下にMoMA.orgのURLが記されているのを見つけ、おや?と思う。これらは、MoMAクイーンズのアートプロジェクト、"Projects 77" だったのだ。
Sara Morris、Julian Opie、Lisa Ruyter 、3人のアーチストが、各々既存の商業空間であるビルボードをメディアとする5点を制作。アートギャラリーが多いマンハッタンのチェルシー地区に3箇所、移転したMoMAクイーンズと、その姉妹ミュージアムであるP.S.1 の周辺に合わせて12箇所、計15点のインスタレーションは、今月7日に始まり、12月1日までの期間、"展示/掲載" される。
確かにこれはアートのプロジェクトであり、芸術を鑑賞するという心構えなく歩いている私たちを (そうと気づけばの話だが)突如として非日常的空間へとトリップさせるパブリック・アートである。だが同時に、URL、作品名、アーチスト名が記されたビルボードは、美術館とアーチストの広告にも充分なっている。クイーンズのビルボードは、マンハッタンからバスやサブウェイに乗ってMoMAクイーンズに行くときに窓から見える場所にあり、美術館への水先案内としての役割も果たしているし、それぞれの作品は、それぞれのアーチストの作品性を一般大衆に向けて大々的にアピールするものでもある。
1999年のクリスマスに、ジョン・レノンとヨーコ・オノはタイムズ・スクエアのど真ん中と世界10都市のビルボードでメッセージを投げかけたりしているので、ビルボードというメディアをアートに用いるという着眼点自体は新しいものではないし、ジョン&ヨーコほどのカリスマ性や強いメッセージ性がない分、"Projects 77" は、そこに包み込むものがなんであれ、コマーシャルなものに見せてしまう広告としてのパワーの方が勝っているような気がした。
--> Museum of Modern Art の"Projects 77" のページ --> 関連記事: Essence of NY 1999年1月22日号 『循環するメッセージ/ジョン・レノン& ヨーコ・オノ』
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上からSara Morris、Julian Opie、Lisa Ruyterの作品
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