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Feature 03:
カラフルな求人広告 by Merrill Lynch
updated on June 24, 2003

人種、性別、国籍、いかなる理由でも採用の際に差別があってはならないのは、日本でも、その他多くの国でも同じだが、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まるアメリカ、訴訟王国であるアメリカでは特に神経質である。

ここに紹介しているのはヤング・エグゼクティブをターゲットとした雑誌、『mba jungle』誌に掲載された証券会社メリル・リンチの求人広告。キャッチコピーはBe yourself (自分でいよう)。太字で幾分大きいフォントではあるが文頭の一文となり、そのまま以下のリードコピーに続く。

人種も民族も宗教も国籍も性差も。つまるところ、人類の多様さのひとつにすぎない。一人ひとり。合わせて60億人の私たち。*強気になろう。

メリル・リンチは、**Robert Toigo Foundationを誇りを持って支援します。

メリル・リンチは、均等な機会を与える雇用主です。


*bullish:強気の 楽観的な ここでは「求人に応募するのに、差別をおそれて弱気になるな、躊躇するな」の意か。メリル・リンチのコーポレート・マークが雄牛bull なので、それとかけている。金融用語でbullish market は強気の市場・上げ相場。
**Robert Toigo Foundation :金融業界を志望するマイノリティの学生を援助している財団。


広告掲載主はメリル・リンチである。メリル・リンチがどんな会社なのかや求人についての説明はない。広告のメッセージは単純明快。個人を尊重、差別はしません、ということだけだ。

こういうメッセージを伝える時、メインビジュアルとして即座に浮かぶのは、リードコピーの冒頭にあるようなバラエティに富んだ人々が勢揃いし、打ち解けた雰囲気で肩でも組んで白い歯を見せ、爽やかにカメラ目線で笑っている・・・といったそのまんまな写真だろうが、そういう結論には至らなかったところがこの広告が目立つ所以だ。

ここで使われたメイン・ビジュアルは、オレンジ、ピンク、パープル、ブルー、グリーンの指紋。同じ指紋は2つとないので、それをモチーフにすることで「個」を象徴し、カラーで多様性を表した。多彩であること、特に人種がバラエティに富んでいることをしばしばアメリカではcolorful (カラフル)というから、広告の核となるべきメッセージが文字通りメインビジュアルになっていることになる。

白のバックグラウンドに5色の指紋という模様、キャッチ・コピーとロゴの黒、全体の白くクリーンなイメージを損なわないグレーのリードコピー。清潔感があり、端的で軽快で、計算されたインテリジェントな広告だと思う。

-->Merryll Lynch のオフィシャル・サイト
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