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NY now :
NYPDとパトロール
updated on December 25, 2003

先日、NYPDこと、ニューヨーク市警のパトカーに乗るという体験をした。別に悪いことをしたわけではない。ニューヨーク市警には、Ride-Along (http://www.nyc.gov/html/nypd/html/dcca/dccacommparticationprog.html) という一般に公開されているプログラムがあって、自分の身が危険になってもかまわないといった内容の同意書に署名をし、申込用紙を提出すれば、撮影・録音禁止という条件付きで約2時間のパトロールに随行できるのである。いわば一般人の一日おまわりさん。アメリカ居住者でなくても、18歳以上ならば申し込み資格があり、ちなみに過去1年で1657人が参加したそうだ。

日本から取材でNYに来ていた知人の編集者と2人で緊張しつつ参加したのだが、これが意外にもくだけた雰囲気のものだった。随行する警官(2人)によるのだろうが、こっちはミーハーな気持ちではいけないという意に反して、にやける顔を引き締めるのに必死だったのに、パトカーに乗り込もうとするやいなや、警官に「運転する?」なんてジョークを飛ばされた。勤務の邪魔をしてはいけないから、ただ傍観できるだけなのだと思っていたら、普通に話しかけてもオッケーだったので驚いた。

パトロールが始まると、無線でしょっちゅう連絡が入り、現場に直行する。限られた管区内の2時間の間に、路上でのサックス演奏への苦情、路上キャッチ絡みの支払いトラブル、誤報、カフェでの置き引き、乗用車同士の接触事故などの現場に向かった。現場に着いたらパトカーで待機してるのかと思いきや、なんと、その場まで行かされたので、またまた驚いた。誤報に関しては、事件の内容が不明だったので怖かったが、それ以外はどれも口頭での揉め事処理だったので良かった。

正直言って、警察官がこんなに忙しく働いているとは、今回このプログラムに参加するまで思いもよらなかった。街を歩いていて、おまわりさんが呑気にピザを食べてたりするのを見るにつけ、ニューヨークってめっきり安全になったし、暇なんだなーなんて思っていた。パトロールなんて、パトカーでぐるぐる決められたコースをまわっているだけだと思っていた。事件が起きているなんて知る由もないこの瞬間に、例え凶悪犯罪ではないにせよ、何かと事件は起きていたのだ。見なければ見えないものがある。ニューヨークに住んでほぼ10年。知らないニューヨークってのがまだまだあったんだなぁ。貴重な体験の2時間だった。


(ニューヨーク編集室 向井余史子)


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2003年 12月号 [ Feature 01 | Feature 02 | NY now ]