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ストリート・ウォッチング
R.I.P.

気高くも日常は続く
10/11/01

星条旗
SOHO、West Broadway 沿いのお店のショーウィンドウ

「1日も早く平常通りの暮らしに戻ることがテロに屈しない姿勢である」と、テロ直後から市民に対して呼びかけてきた市長は、NYPD(ニューヨーク市警察署)、NYFD(ニューヨーク市消防署) のメンバーと共に9月29日放送の老舗お笑い番組『サタデーナイト・ライブ』に出演し、「Our hearts are broken, but they are beating, and they are beating stronger than ever(私達の心は砕けたが、心臓は鳴り続けている。それは、かつてなかったくらいの強さで)」という言葉でTVショーのオープニングを飾った。

記者会見で、市長は「我々は、いかに笑い、そして同時に泣くかを考えていく必要がある。これからも当分は葬儀や追悼会に出ることになるだろう。だけど、どんな日でもみんな涙し、笑い、そして生活を、人生を継続していく準備をしなければならない」と語った。「野球へ行こう、オペラに行こう、自分自身を楽しもう。亡くなった方々の名誉にかけて。私達は生きているのだから。彼らは私達に人生を楽しんでもらいたいに違いない」とも。

ジュリアニ市長は、サタデーナイト・ライブに自らが出演することで、世界に、ニューヨーク・シティは生き続けているし、笑ってもオッケーなんだということをアピールしたかったのだと言う。

テロ後の最初の日曜日、あちこちの教会で結婚式が行われていた。テレビも数日後には平常のスケジュールに戻った。1週間後にはメジャーリーグも再開された。テロがあった週末は、映画館を訪れた人がいつもに増して多かったと報じられている。

サタデーナイト・ライブなど、4大ネットワークで辛辣なことをやってきた番組では、ブッシュ大統領を茶化すネタ、テロに関するネタなどはふさわしくないとして自粛してはいるが、ベストセラーとなった自伝を自作自演で映画化した『プライベート・パーツ』でも有名な毒舌DJハワード・スターンは、テロの3日後の自分のレギュラー・テレビ番組で「売春婦は消防士と救助隊に無料でご奉仕すべきだね」、「イスラエルに負けてもらおう。そしたらテロ問題なんて1時間以内に解決する」「アフガニスタンを大きな駐車場にしよう」、「オレは大統領を支持する。だが、もっと過激にやっちまうべきだね。アメリカが起こした問題をちゃらにするチャンスだ」といつもの過激さを披露。ラジオやテレビの統制にあたる機関のコミッショナーからはクレームをつけられたが、一方では、呆れつつでも、いつものようにショーを楽しみ、笑いを取り戻した彼のファンも多かったのではないかと想像する。彼の発言の適切、不適切はさておき。

大惨事が起きた後、祝い事や、イベントが延期されたり中止されたりといった話を日本ではよく聞くが、ニューヨークは違う。アメリカは違う。それは、これらエンターテイメントがアメリカのカルチャーであるという自負があるからだろう。自由を謳歌することが、アメリカ人であるプライドだからだろう。

テロから4週間が過ぎた。ニューヨークの街は、一部の地域では電話が未だ不通だったり、粉塵が降り積もったローワーマンハッタンの一部では閉店したままのお店もあるが、その地域を除いた地域では、ほぼテロ以前と同じように営業が開始されている。ウィンドウには国旗を掲げている所も多い。その意味は、犠牲者への追悼、アメリカ人としての誇り、復興への願い、様々であろう。その表現の豊かさにニューヨークらしさを感じた。

歴史を見れば、テロから報復攻撃にまで発展した今回の事態が、単純にアメリカ政府が言っているような "悪 V.S.正義" の戦いであるとは思えない。様々な文化を持つ世界中の国々で、全ての人がそれぞれの人生を謳歌できる時代がくることを願うばかりだ。





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