カタログ、と言いたくなるようなページ数と紙の重さであるが、観音開きになっている見開きの左ページが "アン・クライン" とアン・クラインのカジュアル・ライン、"Aライン" のそれぞれ2つのブランドの扉ページとなっていて、白地にシルバーでリードコピーがある以外は、キャッチコピーもなければ、服のスペックさえない。延々と登場するのは、「仕事ができる女性」というイメージのキレーなモデルなんかではなく、正真正銘のキャリア女性。

知性の魅力。想像力の輝き。信念の明確さ。アン・クラインは、誇りを持って偉大な女性を讃えます。なぜなら、女性が何をしようとも、本物の実体なしでは、本当のスタイルは存在しないからです。 --THE ALLURE OF INTELLIGENCE. THE RADIANCE OF IMAGINATION. THE CLARITY OF CONVICTION. ANNE KLEIN IS PROU TO CELEBRATE SIGNIFICANT WOMEN. BECAUSE NO MATTER WHAT A WOMAN DOES, WITHOUT REAL SUBSTANCE, THERE IS NO REAL STYLE.-- というリード・コピーに始まり、文字は常に氏名と肩書きのみ。

3 (2の両ページ展開中面)--別ウィンドウ参照を例に取ってみると、左から小説家、前テキサス州知事、女優・脚本家、劇場・オペラ・映画デザイナー、ディレクター、会長兼CEO、ハイテク・ベンチャー向け投資家、トニー賞受賞ダンサー、金メダル水泳選手、歌手、CEO兼会長、ウェストチェスター郡検事、オリンピック選手、の蒼々たる面々。他、ニューヨーク・シティ・バレエ・プリマドンナ、ジャーナリスト、前裁判官、オペラ歌手、バイオリニスト、スタント・ウーマン、産科・婦人科医、エッセイスト、プロデューサー、...。何かをやり遂げてきたという確信を持つ者だけが持つ絶対的な存在感を漂わせながら、ただそこにいる。セクシー、キュート、これまで女性の価値を測り続きてきたそんな男性中心の価値観が陳腐に思えてくるくらい、ここには他人に媚びた表情がない。彼女らの実績が、強さの美、自立の美、成功の美、を醸し出している。

実際にはどの分野においてもこれだけの成功をおさめ、彼女らの地位に相当するポジションにたどり着くこと自体、ほとんどの凡人にとっては「夢」みたいなものなわけだが、ガリガリに痩せたモデルや抜群のスタイルのモデルがファッショナブルに着こなしているよりは、確かに外見的には手が届きそうである。後半に、"ベッドタイム・ストーリーの語り手"、"5人の孫を持つおばあちゃん"、"永遠の学び手"、"アマチュア菌類学者" ・・・といった親しみがもてそうな肩書きをつけて、同じ女性を何度も違うページで登場させる手法は、様々な顔を持つ女性、という演出であるのと同時に、成功していないフツーの人々の共感を得るのにも貢献している。

キャリア女性をターゲットにしたアン・クラインとしては、これで実のあるブランド・イメージを作るのに成功したと言ってもいいだろう。

最終ページは下記のようなデザイナーからのメッセージで締めくくられている。