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アメリカではタバコに対する風当たりが非常に強い。健康に悪いとされているものを、おいしいですから "吸いましょう" とは広告できない。そいういうわけで、キャメルの広告は、「サブリミナル効果 のある壁面広告？」(エッセンス・オブ・ニューヨークのStreet Watching、1998年11月３日号)のようなビルボードになり、"TIME" 誌に掲載されたフィリップモリスのメリット・ウルトラ・ライトはこうなった。

バレエのトウシューズを履いた相撲取りが、チュチュこそまとわないが、さがり（まわしの飾り）を軽やかにはずませレッスン場で踊っている、の図。パッケージ写 真の横にあるキャッチコピーは「Discover the rewards of thinking light」。ライトは軽く考えるともとれるし、明るく考えるともとれるが、とにかく「ライトに考えることによって報われることを発見しなさい」気楽に行こうよみたいなことを言っている。

相撲取りは極めてマジメな表情であるし、彼が踊っている所は黄昏の街並みが窓の外に見える静かなレッスン場。キャッチコピーに選ばれたタイプフェイスも、にこりともにやりともしない、ふざけたイメージのないものだ。これら全てのビジュアル・モチーフが、単に「相撲取りがトウ・シューズを履いて踊っている」変な広告に終わらせず、心にひっかかるシュールさを醸し出すことに成功している。

ロジックは極めてシンプル。商品名であるウルトラ・ライト、Ultra Lights＝「超軽い」の文字通りの意味を絵で表現しようとした結果だ。

これまでのタバコの広告では、おちゃらけたものは見かけなかった。馬に乗って泥や水しぶきをあげて走っている男らしいカウボーイだったり、美しく爽やかに微笑みを交わしつつ見つめ合う美男美女のカップルだったりと、実際にそれがカッコイイかどうかは別 として、絵に描いたような正統派イメージ広告が多かった。

メリット・ウルトラ・ライトは、１年前には右のような雑誌広告を同じ媒体、"TIME" に出稿していたわけだから、これまで曲がりなりにも築き上げてきたブランドイメージをかなぐり捨てた、この転身はすごい。制作体制の軽さに驚くとともに、商品のイメージを作る広告のボキャブラリーの重さに驚く。

• フィリップモリス のオフィシャル・サイト--＞www.pmdocs.com

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