アメリカでテレビを見てると、画面の右下隅(時に左下のこともあるが)に、そのテレビ局のロゴが表示されていることがある。見慣れるまで少々鬱陶しいものでもあるが、マンハッタンだと、タイムワーナーのスタンダード・ケーブルに加入(ちなみにほとんどの地域では、ケーブルに加入していないと電波の状態が悪く、きれいに映らない)していると70チャンネルもあるから、必要悪なのかなとも思う。
ここに紹介したのは、広告、マーケティングの専門紙、"Advertising Age" に掲載された、テレビ局TNTのロゴ刷新の告知広告。タブロイド版の新聞の中程に、A4サイズの厚手の紙の広告1枚が着脱できる糊で貼られていたもの。
中央やや上に置かれたのが、その新しいロゴとキャッチフレーズ[WE KNOW DRAMA] のセットで、これがぺろりと剥がせる透明ステッカーになっている。コピーを訳すと、「これが私達の新しいロゴとスローガンです。私達はこれを6月12日火曜日、アメリカに紹介します。どんな風に見えるのかプレビューをご覧になりたい方は、このステッカーを剥がしてご家庭のテレビの右下のコーナーに貼って下さい。ご協力ありがとうございます」。
そして裏面は、新しいロゴセットをテレビ画面の右下コーナーに表示した状態でのこのテレビ局の主な番組案内。
実際に剥がしてテレビに貼ってみようかという人がどれだけいるのかは、この広告において問題ではない。ロゴセットが新しくなりますという告知のしくみとしてよくできていると思う。視聴者にとって、テレビ局のロゴを見る機会というのは、番組を見ているときに右下コーナーに表示されている、それ、だからだ。
エッセンス・オブ・ニューヨークでは、過去に "メイン・グラフィックが取り外せて、役に立つ"(7/22/98号)というのを紹介したが、あれはプロモーション連動型で、剥がされた封筒というのはいわばプレゼント引換券。こちらの方は役に立つ式ではなく、ちょっとした茶目っ気。ロゴが変わるとこうなるんですっていうのを想像させるために剥がして貼って下さいと言っているだけ。だが、それを想像させたら、もうその時点で訴求効果がある。
そもそもこれ、明らかに貼られることを想定して作られていない。私は今、剥がして実際にモニタに貼ってみてえらいことになった。ステッカーを剥がすと、モニタの表面に糊がべっとり残ってしまった。