ミッドナイトブルーの闇の中を一台の車が走り抜けていく。その軽快さ、乗り心地の良さをビジュアルで表現するとこうなりました、そんな雑誌広告がこれ。

説明コピーやスペックは勿論、キャッチコピーさえない。だから真っ先に白抜きの五線とト音記号と音符が目に飛び込んで来て、左からざーっと見ると、エンジン音が聞こえてくる。

「ブルルルン、ブルルルン、ブルルルン、ブルルルン」と、４回ふかし、次にふかしたら、「ブルルルルルルルル・・・・・・・・・」と走り出し、その後はずっと静かに安定してスムーズに地面 に吸い付くような走りで、いかにも乗り心地が良さそうだ。

音符自体は右ページの端５cm位を残して終わっているが、裁ち切りになっている五線が、引き続きＢＭＷが静かに走り続けている音を感じさせる。

理屈に訴えるのではなく、感覚に訴えかけることに成功している広告の気持ちよさがこの広告にはある。言葉が不在だから見る側がエンジン音を自分で創造する。自分の内側で聞いた音だから耳に残る。心に残る。広告にありがちな押しつけがましさを全く排除して、しかし見る側の心にちゃんと入り込んでいる。とても大人な広告だ。

見開きページの右ページ中央には、ニュー・スリー・クーペ、シルバーのＢＭＷ。その下には両ページにまたがって、右端が裁ち切りになった楽符。右ページ右下にはＢＭＷのロゴマークと、その下に "Play. The new 3 coupe. | The Ultimate Driving Machine® (プレイ。ザ・ニュー・スリー・クーペ。| 究極のドライビング・マシン)" というキャッチフレーズがある。"Play" には、「遊び」という意味と、楽器を演奏する「プレイ」という意味があるから、「ニュー３クーペは、演奏を楽しむようにドライブできる車」ということを１単語でさらりと言いきっていると思う。

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