ソーホーにあるギャラリー、アイストーム eyestorm。歩道に面したウィンドウに大型の液晶スクリーンがかかっている。スクリーンの下には、小さなカメラ。そのレンズが捕らえるものがこのスクリーンに映し出されるしくみ。
ここまでなら、電化製品屋の店頭で、通りを行き交う人々を映し出すビデオカメラと変わらない。このモニタ、映し出された自分の姿が、火だるまになったり、砂嵐になったり、輪郭がオーラのように発光したり、波紋を形成したり・・・。どうやら、動く物体に反応して勝手に数パターンのビジアル・エフェクトをかけるらしい。日常的なソーホーの街角の風景の中、突然、数台の車が炎上・・・となるのは、かなりのインパクトである。
通りがかりの人々は、そのしくみを発見すると、驚き、次におもしろがって、カメラに向かって手を振ったり、何度も前を行ったり来たりと、そこに投影されている火だるまの像が自分であることを確認するための行動をとったりしていた。
本作品は、インスタレーション、スカルプチャー、マルチプル(絵画,彫刻など大量生産のアート作品)といったものを都会空間に設置するアーバンアートを作り続けているグレイワールド Greyworld というアート集団のプロジェクト。設置した時点ではこの作品は未完成で、通りがかりの人々がカメラの前を行ったり来たりして制作に参加することで、予期せぬ非日常空間の中の一部となり、このアートを完成させるというから、ソーホーのショールーム前での通行人の反応は、彼らの思う壺。コンセプト通り作品は完成というわけだ。
アイストーム eyestorm は、ウィリアム・ウェグマン、ジェフ・クーンズ、ダミアン・ハーストといったアーチストの作品を、ロンドン、パリ、ニューヨークのショールーム、そしてインターネットを通して販売するイギリスの会社。既存のできあがった作品の販売ではなく、アイストーム特別限定作品を共同プロデュースするという点を特徴とし、自らをギャラリーとは呼ばず、アート・メディア・カンパニーとしているようだ。
今回紹介したのは、ストリートに向けて展示されていたアート作品なのだが、非常に衝撃的に心を奪われたので取り上げることにした。街中に設置されたものが、人々の目を捕らえ、設置した側の思惑通りの行動を人々に取らせるという流れは、広告的に見ても共通するサクセスがあると思う。