リーバイス・ストラス社がマンハッタンの街角を賑やかしている。今回は、もの言うレッドタブ(6/1/98)で取り上げた、レッド・タブのシリーズ街頭広告とは全く趣向を変えた、シルバータブの街頭ポスターである。

レッドタブは、501を初めとする定番ジーンズを扱い、シルバータブは元々はたくましい系アフリカン・アメリカンにターゲットを絞って作られたものであるが、近頃では、今時のストリート系ファッションをフォローしている。そういった若い層に向けての広告ということを考えると、この一連の街頭ポスター、うまく機能している。

ニューヨークでは工事中の建物を囲う壁やらによく映画やコンサートのポスターが貼られているが、シルバータブのポスターは、それら通 常のよくあるポスターの4枚分の大きさで、連貼り、そしてカートゥーン（マンガ）・チックなイラストのポップで明快な色使いによって、他を押しのけて一番に目に飛び込んでくる。世の中全般 ポスターは写真を用いたものが多いので、それらが並ぶ中、イラストであるだけで、しかもそれがでかいとなると、とても目立つ。

英語とスペイン語をミックスしたスパングリッシュもあるキャッチコピーと、とっても今時なおしゃれをした若者、即ちシルバータブのターゲットを描いたイラスト。何のレトリックもオチも奇のてらいもないが、ここには戦略がある。

--クリックすると、拡大写真が見られます。（各21〜26K）--

ブルーのマニキュア、あるいは１つの手に赤と黄の2色のマニキュア、チェーンのブレスレット、薬指以外の指全てにはめられたリング、ベルトをせずに下腹部までずらしてはいたカルゴ・パンツ、ぽちゃっと出たお腹のライン、ピチピチのサイケ柄の7分袖のカットソー、ちょっとずらしてかけた黒縁の眼鏡、チョーカーとネックレスを2連にした首元、襟を立てて着たカフスボタンの袖の折り返しが大きな白いシャツ、腕全体に入れたトライバルのタトゥー、長い残りをぶらんと垂らしたベルト、ひもをはずして履いたアディダスのスタン・スミス、トレーナーと裏地がオレンジのアーミーのコーを着ててもボトムは素足にピチピチの7分丈のパンツ、でっかいけど鳴らしながら持ち歩いてる銀色の四角いラジカセ、下唇の下にちょっとはやしたヒゲと揉み上げから細く続けたあごヒゲ、幾筋もに編んだ髪・・・。

一見単純なただのファッション・イラストにも見えるこれらのイラストは、シルバータブのターゲットの若者らが考える「クール」を細部にわたってよく表現している。陰影なんかが絵の中に表現されていなくても、服や小物の素材感まで簡単に伝わってくる。視覚的にはスーパーリアルじゃないこれらのイラストの中には、情報的リアリティがスーパーにある。モデルを使わず、カートゥーン・チックなイラストを用いた表現手法自体も、彼らにとってのリアリティであり、二重の意味での原寸大のリアリティが共感を呼ぶのである。

彼らはおそらく服を選ぶ時、素材や縫製や値段を判断基準にはしないだろう。「クール」だから着るのである。だからシルバータブはここに「今風」を表現した。こういうキッズに言葉や理屈はいらない、フィーリングだという作り手の確信が感じられる。

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