とは言うものの、ブティックやデパートの大がかりで凝ったショーウィンドウをサンクスギビング用のものからクリスマス用のものに一夜のうちに総入れ替えするというのは至難の業だ。そのため、移行期間中は、作業中であることを明記したスクリーンでウィンドウを覆ったり、ガラスに断り書きを貼った上でデコレーターが通 りから丸見えのままウィンドウの中で装飾の作業を行っていたり、といった光景があちこちで見られることになる。

ロックフェラーセンター・プラザの東に位置する老舗デパート、サックス・フィフス・アベニューのショーウィンドウも例に漏れず改装中で、青いスクリーンがショーウィンドウに架けられた。だが、これ、ただの目隠しではない。

ガラスの星を散りばめた青いスクリーンを夜空に見立て、サンタクロースの名前入りの望遠鏡のレンズの部分はショーウィンドウの中が見られるようなしくみになっている。穴があったらのぞきたいというのが人情。道行く人々は望遠鏡の前で立ち止まり、端から１つずつ順番を待ってでも5つとものぞき込んでいく。望遠鏡からの視界では物足りず、スクリーンの端をめくって全貌を見ようとする人もいる。

のぞくと制作途中のディスプレイと作業中のデコレーターが見られるわけだが、いかにサックス・フィフス・アベニューのウィンドウ・ディスプレイが美しいとしても、このギミックなくしては、ここまで人々が注目することはなかったに違いない。

通り過ぎていく人々のアテンションを得るのは、ウィンドウ・ディスプレイの使命。隠すことで見たい、知りたいという人々の欲求を形成し、立ち止まらせ、注視までさせたとなれば大成功と言えるだろう。

Saks Fifth Avenue
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