〜Tmes Squareにて〜クリックすると拡大写 真が見られます。（26K）

形のないものを広告したい。さて、どうするか。一つの答えがオンライン株取引サイトの第一人者のE＊TRADE(イー・トレード)のビルボードに（同様のものが公衆電話ボックス横の広告にも）あった。形がない、つまりずばりそのものを絵で見せることができない、だったら文字だけにするのである。

タイムズスクエアのビルの一角を覆うようにして設置されたビルボードは、白地に　E＊TRADEのロゴカラーの２色の文字だけで非常にシンプル。広告面 は３面あって、向かって右から

Waiting for your rich uncle to die is sick.
Plus it might take a while.
お金持ちのおじさんが死ぬのを待つっていうのはビョーキだ。
それに、ちょっと時間がかかる。

If your broker's so great, how come he still has to work?
もしキミのブローカーがそんなに優秀なら、どうして彼はいまだに働かなきゃいけないんだ？

Someone's going to win the Lottery.
Just not you.
どこかの誰かさんが宝くじに当たろうとしている。
ただ、キミじゃない。

コピーの内容は「どこかにおいしい儲け話がないかな〜」と思ったときに、誰もが考えるようなたわいもないアイデアだ。おそらく多くの人が心のどこかに持っている漠然としたお金にまつわる夢を軽く一蹴してくすりと笑いを誘い、キャッチフレーズ&ロゴのセット、It's time for E＊TRADE (イー・トレードする時がやってきた) で締める。

E＊TRADEのこの広告は、「遺産が転がりこむのを待つより早いし、他人って頼りにならないもんだし、宝くじよりは当たる確率が高いかも」と、一応論理的に説得し、「宝くじでも買ってみようかな」というのと同じノリで「オンラインで株でも買ってみようかな」という気にさせる。

アメリカでは、たいていのホワイト・ワーカーが株を所有しているといってもいいくらいで、もともと株というものが日本と比べると大衆的なものだったのだが、オンラインで、ブローカーへの手数料なしで、自宅にいながらにして24時間取引できるようになったことで、より大衆化が進んだ。というわけで、E＊TRADEの広告もエグゼクティブを対象とするのではなく、宝くじを買ったり、なんとなくお金いっぱいあったらいいな〜と考えているような層をとりこんでいるのである。

タイムズスクエアのようなごちゃごちゃと派手なネオンサインやビルボードが密集している場所にあっては、こういうデザインが一番目立つ。それからこれはロゴの認知度が高ければこそであるが、このパープルとライトグリーンの組み合わせは、それだけですぐに人々の頭にE＊TRADEを思い浮かべさせるに足るものである。

雑誌に掲載された"Someone's going to win the Lottery. Just not you." バーションは、宝くじの当選者を告げる女性のモノクロ写 真とつらつらとリードコピーがついたものであったが、これらが付加されることで、コピーのおもしろさやE＊TRADEカラーが消えてしまい、随分ありきたりのものに見えた。過ぎたるは及ばざるが如し、なのは、広告の世界ではよくあることだ。

追記：タイムズスクエアにビルボードが出せるのはその会社に勢いがあってこそ。最近は、サン・マイクロシステムズ、インテル等、インターネット関連の会社が参入してきていて、時代を感じます。

• E＊TRADE オフィシャル・サイト

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