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街角

スケールを遊ぶ
REACTIONTM Kenneth Cole
8/6/99

ケネス・コール
〜Chelsea にて〜
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ビルディングにはしごをかけて上っていく巨人、発見。これはニューヨークのレディース&メンズ・アパレルのケネスコールのシューズ、バッグ&小物アクセサリーのブランド、リアクションの壁面 広告。

12階建てのビルディングの上から下まで、横幅も約8割を占める超ビッグなもの。コピーはなし。左下にブランドのロゴ、上部、空の部分にKC-REACTION.COM というURL があるだけ。ニューヨークでは、しばしばクールな壁面広告に魅せられるが、これはその中でも愉快なまでに異彩 を放っていた。

これは絵画の手法で言うなら、トロンプルイユ。エッシャーが極めた"だまし絵" だ。ビルディングが茶色の煉瓦造りでこの壁面広告の男性が上っているのも茶色の煉瓦造り。足下の煉瓦は大きく、そこから極端な遠近法を用い、相当な高さのビルディングのようだが、実際のビルディングの10階あたりで広告内のビルディングは終わりで、残りはこの日に空の青さにも似た濃いブルーの空となっている。男性の足の大きさと煉瓦の大きさの比率からだけ判断すると、彼は巨人ではない。巨人でない彼が遠近法のせいで巨人になっているのだ。

窓のある建物にこのような壁面広告を掲示する場合、もちろん窓の部分は切り抜き窓を開けなければならないわけで、大抵はその唐突な空白を見て見ぬ 振りをするという暗黙の了解の中で制作していて、目も当てられない失敗例だと、窓の位 置が計算に入れられておらず、広告の中で重要な部分、例えばモデルの顔面 に切り抜き窓が開いていることになる。リアクションの広告では、本物のビルディングの7〜8階あたりの窓など、大きさ的に実際の窓と広告の中のビルディングの窓とがぴったりきていて、虚構の世界に瞬間的リアリティが生まれている。

ビルディングを覆う広告を作るんだから、ビルディングを背景にしたものがおもしろそうだな、という所まではアイデアとして生まれそうだが、そこに強力なインパクトを与えるには、ビジュアルなレトリックが求められる。下から上を見上げる形で遠近法を超デフォルメすることで巨人の存在を可能にした所にクリエイターの力量 が感じられる。

そしてここまでできたところで完結だ。街中でこんだけのでっかいスペースを使って会社名や商品名を選挙カーのごとく連呼するような下品な広告があったらそれは公害だ。かっこよくスマートに遊んで終わり、そういう広告が気持ちいい。


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