黒板の中には「最高で11ドルにもなる彼らの配達料金 マイナス 私たちの配達料金である3ドル
イコール 最高8ドルの節約 」(UP TO $11 THEM
- $3 US=UP TO $8 SAVINGS)と書かれていて、キャッチコピーは「これはロケット・サイエンス(難しい計算)ではありません。イーグル(アメリカの国鳥であり、郵便局のシンボル)
のように飛ぶことです (This is not rocket science. Fly
Like an EagleTM)」そして下部にはフェデックス、ユー・ピー・エス、郵便局のパッケージとそれぞれの料金である$11、$11、$3の文字。郵便局のパッケージからの矢印の先には「What's
Your Priority?SM」という押さえのコピー。"Priority"
は、文字どおりの"優先順位" という意味と、郵便局が提供している2〜3日後着のサービスの"Priority
Mail" をかけている。
イラストを使って郵便局の"お得さ"を単純明快に図示し、事実だけをさらりと告知しているので、自社の優位
性を強調していても嫌味に感じられない。
そして右は食品メーカー、プログレッソの比較広告。お相手はアンディ・ウォーホールのスープ缶
のシルクスクリーンで有名な老舗キャンベル。
上の皿にはヌードルと具のチキンが入ったスープ。皿の下に一行「キャンベルの濃縮チキン・ヌードル・スープ
(Campbell's condensed chicken noodle soup)」。下の皿には、太めのヌードルにたっぷりのセロリ、ニンジン、チキンが入ったスープ。そして皿の下に一行「プログレッソのホワイトミートチキン・ヌードル・スープ
(Progresso white meat chicken noodle soup)」。
キャッチコピーで「プログレッソはお味も(キャンベルよりも)いいです。」と言い切る。続いてリードコピーが「どうして同じ古いスープに固執するのでしょう、プログレッソがあるのに?プログレッソはすべて柔らかくて(カロリーが低くヘルシーな)ホワイトミートチキン、大きな野菜いろいろ、コシのあるのパスタ、そして豊富で新鮮なシーズニングでできています。プログレッソは一口一口が見ての通
りのおいしさです。(Why settle for the same old soup
when you can have Progresso? Made with tender chunks of all white
meat chicken, big slices of garden vegetables, firm pasta and an
abundance of lively seasonings, Progresso tastes every bit as good
as it looks.)」、サブ・コピーが「プログレッソのベターな味を発見しよう。(Discover
the better taste of Progresso.)」と、ひたすら何の臆面もなく自画自賛。
味に関しては、消費者の有無を言わさぬ賛同が得られるかどうかは分からないものの、視覚的には、断然プログレッソのスープがキャンベルのスープより具の種類、大きさ、量
、すべてにおいて勝っているのが、一目瞭然で伝わってくる。
日本には馴染まないとされている比較広告。敵といえども悪口を言うのは日本の風土・美徳に合わないということらしい。だが、広告の内容が紛れもなく客観的な事実であり、それが消費者にとって有益な情報であるなら歓迎されないはずがない。微妙な付加価値をイメージ戦略で作り上げて特定のターゲットだけに届くメッセージを送るよりも、普遍的効果
が期待できる。花より実の、紛れもない事実にちょっとしたユーモアや茶目っ気を散りばめた比較広告なら、日本の土壌にも受け入れられていいはず。