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デザイン・ウォッチング
意匠

オーガニック・エッグのパッケージ
The Country Hen's Six Brown Eggs
6/11/98

eggs
パッケージが果たす役割にはいくつかあるが、その一つに「輸送過程における商品の保護」がある。先進諸国と発展途上国を比べると、その効率の差は劇的で、例えば西欧・アメリカの先進諸国の場合、消費者に届くまでに食料品をダメにしてしまう確率は3%以下に過ぎないが、発展途上国のそれは、50%にも及ぶという。

輸送に最もデリケートな注意が必要とされるものの代表と言えば、まず頭に浮かぶのが卵。今では日本なら透明のプラスティック、アメリカなら薄い発砲スチロール製のパッケージが主流となっているが、以前は圧縮した紙製のパッケージを使用していた。写 真は現在もその昔ながらの圧縮カードボードでパックしているカントリー・ヘンの卵。古いスタイルのものが新しいものに勝っている例がここにある。

卵のパッケージなんていうものは、あまりに生活に密着し過ぎて、それがグッド・デザインかどうか検証されることなど普段ほとんどないだろうが、実はこれ、たいへんよくできている。他の商品を見る限り、通 常は一つの商品に対していろいろなタイプのパッケージのありかたが存在するものだが、卵に限って言えばこの形態しかない。壊れやすい卵を一個一個ぶつかりあわないように納めた上で、ぱかっとパッケージのふたを開けた状態が、そのまま卵ホルダーになっている。「保護」と「収納」と「使用」、すべての機能を追究した結果 であり、非常に完成度が高いから、第二のデザインが存在しないのだ。

保護」という観点から言うと、透明のプラスティックにしても薄手の発泡スチロールにしても、この圧縮カードボード製のものに比べて劣るため、個別 のパッケージの隙間をまた余分なシートをかませたりすることで補っており、昔ながらのこの圧縮カードボード製パッケージを上回る素材は、実は未だかつて登場していない。

収納」と「使用」について見た場合、日本の糊付けされたあの透明プラスティック・ケースはいただけない。(開ける時のあのパリパリいう音が実に耳障りな上 ! ) 冷蔵庫にケースのまま収納することを念頭に置いていないのだろう、開けた時点でケースのどこかが必ず破れるし、一度開けるともう閉まらない。一方カントリー・ヘンのパッケージは糊付けされていないので、そのまま冷蔵庫の棚に置いて、開閉自在の立派な入れ物として役割を果 たす。

抗生物質添加の餌を与えず自然食で育てた放し飼いの雌鶏から生まれたオーガニックの卵を、エコロジカルなイメージとともに売るためにも、紙というのは優れたマテリアルだ。紙に染み込んだブルーと赤の雌鶏のイラストもかわいくて、他の卵とは別 格のキャラクターを演出するのに成功している。

いつの時代も古いものは新しいものにとってかわられていくが、それがいつもデザイン的・機能的に正しいとは限らない。丈夫でエコロジカルで形成自在なこの素材、石油化学製品の代用品として、もっと見直されてもいいのではないだろうか。

an egg

追記:アメリカでは卵はだいたい12個1パックで、半パック欲しい人は店頭で自分でパッケージを半分にちぎる。そうした場合にも紙の方がちぎりやすく、ちぎった時に形が崩れにくくていい。あと、みんな買う前に卵が割れていないかどうか調べるので、中身が見えないタイプの素材を使っている以上、開閉自在でなければならない。


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